ロシア政府によるウクライナ侵攻に関する緊急声明
慶應義塾大学教員有志
我々、慶應義塾大学でロシア・東欧・ユーラシアに関する研究と教育を行う者は、ロシア政府によるウクライナへの軍事侵攻を強く非難し、即時停戦を求めます。
また同時に、ウクライナとロシアの両国に対し、また全世界に対して、すべてのウクライナ語話者およびロシア語話者、ウクライナ国民およびロシア国民に対する、迫害・差別・誹謗中傷・行動の強制が行われることのないよう、強く要望します。暴力はもちろん、暴言の応酬、政府と国民とを同一視した個人攻撃、少数派や弱者に対する差別、発言や行動の強要は、どのような状況下であれ許されるものではありません。
現在、ウクライナ国内はもとより、世界中に暮らす当事国の国民と関係者がこの戦争に傷つき眠れぬ日々を送っています。その原因の一つは、周囲の人々からの、あるいはネット上での心ない非難や態度、無責任な言葉です。ウクライナやロシアにおける民族構成と歴史認識には想像を越える複雑さがあり、両国民一人一人のこの戦争に対する立場は、属する国家のそれと必ずしも一致しません。また出自や思想信条の違いによってその生命や職業が脅かさることは、そもそもあってはなりません。
我々は、だから部外者は黙っていようと言うのではありません。むしろ今こそ、少しでも客観的な情報を求め、多くの当事者たちの生の声に耳を傾けるべきでしょう。戦争終結後も両国には深い傷と溝が残ります。失われた人命と遺族の悲しみは永遠に歴史に刻まれ、ウクライナ社会は復旧に多大な時間を要し、ロシアは国際社会で孤立を深めるでしょう。そうした戦後世界で共に生きるために今できることは何か、我々は考えるべきです。
2022 年 3 月 2 日
慶應義塾大学 熊野谷葉子(法)、越野剛(文)、朝妻恵里子(理工)
三神エレーナ、大串敦(法)、北川和美、深澤洋子、守屋愛、
アナトーリー・ヴァフロメーエフ, 廣瀬陽子(総政)、後藤クセーニヤ、
中澤朋子、佐野洋子、籾内裕子、山田徹也
(賛同順)